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2023年度前期修了式が行われました。

2023年度前期修了式が行われました。写真と学府長式辞を掲載しています。

  • 2023年度前期修了式 学府長
  • 2023年度前期修了式 集合写真
  • 2023年度前期修了式 校門写真

人文公共学府・人文社会科学研究科学位記伝達式 荻山学府長祝辞

千葉大学の人文公共学府長の荻山でございます。本当に本日は修了をされた方、おめでとうございます。こうした修了、それから卒業も含めて、大学から巣立っていく方をどのようにお送りするかという点に関しては、二つの方法があると思います。一つは、もちろん皆様、この大学を出られて、社会に出て働かれるという方、あるいは研究を別の形で続けるという方にとって、大学から巣立つということは、新しい門出であり非常に厳しい社会に臨まれるということなので、これから頑張ってくださいという形で発奮を促すというやり方があると思います。そして、もう一つのやり方は、この学位を取られるということは大変なことでもありまして、それを乗り越えられたということなので、大変苦労されたということを労う、というようなやり方があると思います。そこで、私は今回、どちらにしようかと考えましたが最終的に、後者の方が断然ここにはふさわしいというように思いました。つまり皆さんの労を労いたい、ということをメインにして、この祝辞を述べたいと思います。

というのは、私自身の経験がございまして、もうすでに20年ぐらいが経とうとしておりますけれども、皆さんと同じように博士の学位をようやく取得したということで、実はその前に、それがどれだけ大変だったものかということについては、全く意識せずに大学院に入ったということがあります。それは四半世紀ぐらい経ちますけれども、私のいたところでは、こうした懇親会が終わった後に、皆様ホールに集まって、そして現役の学生も集めて、そして懇親会がありまして、そこでお一人お一人修了生の方がスピーチをなさったんですね。そこに私、ちょうど修士課程に入って間もない頃で、何もよくわかっていなかったんですが、出させていただいて、そこで全く面識はなかったですけれども、統計学の先輩の方がスピーチされていて、大変な苦労をしたということをおっしゃっていて、指導教員の先生に随分いろいろ言われて、研究を実質的に否定されるようなことがあると、その時はもう頭が真っ白になってしまってどうしたらいいのかわからなかった、というようなことをおっしゃっておりました。私はそれを伺っていて、そういうものかというぐらいしか思わなかったんですね、その時は。ただその後に、だんだん時間が経って、自分の研究が進んで、自分がそういった局面に立たされたら、それがいかに事実であるか、ということがよくわかりました。

皆さんも、大学院に入られた時には、もちろん学位を取るためには研究計画ということで、最初に何をするかという方向性を決めないといけないと思います。それがおそらく、まず大変だったのだろうと思います。それはちょうど、大航海時代のような時に、まだ海図、世界全体の図がよくわかっていないような時に、未知の世界に航路として乗り出すような、そんな感じだったのではないかなと思います。つまり、どういうことの研究をしたらいいのかという方向性自体もまだよくわからなくて、もう本当に未知の、地球が丸いかどうかもよくわからないような、そういうところで、簡単な地図だけ渡されて、自分で方向を決めなさい、といって、送り出されるような、そんな感じだったのではないかと思います。その中で次第に研究を進めていって、苦労していろいろ調べて、そして考えて何か成果をまとめられて、今度はおそらく指導教員の方のところに持っていくと、これまた非常にひどい、辛辣な、皆さんにとっては厳しいコメントが返ってきたのではないか、あるいはそれをまとめて学会誌などに投稿して、特に匿名のレフェリーから、思わぬようなコメントが来て、また頭が真っ白になるというようなことがあって、そこで冷静さを取り戻して、もう一回考え直して、こういうことかということで整理をして、そして方向性のようなものを調整しながら、そして実証研究だと、そういった調査を繰り返して、ようやく、なんとかある程度認めてもらえるというものができ、指導教員からオーケーが出て、そして学位を取られたということになろうかと思います。

この間とても大変で、これはご自身にとどまらず、今日ご家族の方がおられると思いますけれども、おそらくご家族と生活されている方は、その中で、ずいぶんご家族と喧嘩されたこともあるのではないか、というように思われます。ずいぶん精神的に、大変なところがあったりして、イライラしたりして、そこでご家族の方と、場合によってはお友達とかと、言い合いになってしまうというようなこともあったのではないかなというように拝察します。そういった苦労を乗り越えられて、ようやくたどり着かれたということで、ちょうど今、おそらく、先の大航海時代の話ではないんですけれども、ようやく目的とするところにやっとたどり着いた、という感じではないかなと思います。自分もそうでして、自分の経験を振り返ると、皆さんに、これから新しい門出なので頑張ってください、というように、発奮をメインにして、この最後の餞の言葉を申し上げるということは、到底自分の心ではできなくて、やはり皆さん、本当にご苦労されて、ようやく最終的な目的地にたどり着いた、ということを、心からお祝いをして、素直にお祝いをして、おめでとうございますということを、そしてご家族の方も大変苦労されたと思いますので、本当にお疲れ様でしたということを申し上げて、送り出したいと思っています。もちろん、新しい門出であることは事実ですので、これから頑張る必要はありますが、それは明日からでいいと思います。今日はお戻りになられたら、お友達あるいはご家族と、本当に長い旅路を終えられたということで、お祝いをして、今日は本当にその喜びをかみしめて、そして明日から新しい舞台で頑張っていただければというように思っております。

本当に今日はおめでとうございました。皆様、それからご本人、それからご家族、それから指導教員の方も来られておりますけれども、お疲れ様でした。ありがとうございました。

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