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2023年度後期修了式が行われました。

写真と学府長式辞を掲載しています。

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人文公共学府学位記伝達式 荻山学府長式辞

千葉大学の人文公共学府長の荻山でございます。本当に本日は修了をされた方、おめでとうございます。ここでは、皆さんが大学院で得たものがいかに重要なのかということをお話しして、皆さんを送り出したいと考えております。

具体的には、皆さんがこの大学院で学ぶことによって得たものとしては、次の二つの能力があると考えています。

一つは、まさに学位に直結することですが、ある特定の問題に関して、深く、非常に深く、そしてそれをかなりの長期間にわたって考えることができるという力です。学位を取得するまで、博士前期でしたら少なくとも二年、それから博士後期になると少なくとも三年、実際にはそれ以上時間がかかった方もおられると思いますが、実はそのぐらいの期間、長く一つの問題に関して深く考えるということを、社会の多くの人々がやっているかというと、答えはNoと思います。むしろ社会で活躍しておられる方々の多くは、その日その日に起こるいろいろな問題に対して対処せざるを得ず、一つの問題や特定の問題に対して深く考えて、しかもそれを持続的に何年にもわたって考えるということを経験した方は、とても少ない。そして、その数が少ないということは、それを実は残念ながらできない方の方が多いのだろうと思っています。しかし、皆さんは、そういった長い修行に耐えて、学位論文を書き上げて、そして学位を得た以上、このことは本当に特筆に、そして称賛に値することだと思います。社会の中で見ると、こういった一つの問題に関して集中して深く考えて、それを持続的に何年にもわたって考え続け、そして答えを出すということを、皆さんは経験して、学位をもらったわけなので、そのことは、大きな糧、すなわち、これから活かすことのできる能力になっているという点を改めて実感してもいいと思います。

もう一つの点は、今申し上げたことと関係して、学位を得るという過程で、人間関係、すなわち他の人との関係をどのようにうまく保っていくかというトレーニングも実はしてきたという点も、皆さんの財産になるということを強調したいと思います。それは何かというと、皆さん、修士号ないし博士号を得るまでに、何か書いたものを必ず先生のところに持っていって相談に行って、最初はおそらく相当に、先生方がおられるので申し訳ありませんが、厳しいことを言われたのではないかなと思います。そして、いろいろな注文、ここはダメだといった問題を指摘されて、最初のうちは精神的にダメージを受けたのではないかと思います。先生方は、表面的には優しそうに見えますけれども、優しい先生は誰一人いなかったのではないかと思っています。皆さん、指導の中では大変苦しい経験、特に先生方をどうやって説得してうんと言わせるかという点で大変苦労されたのではないかなと思います。この点は、もちろん先ほど申し上げた第一点目と関係して、ある特定の問題についてよく考えて、準備をして持っていったけれども、先生方からいろいろ指摘される結果となったものと思います。しかし、そこで重要なのは、大変凹んでしまって、先生方を恨んだということもあると思いますが、先生方と、喧嘩をしない、つまり、仲違いをしない、そして関係を崩さないで、どうやって関係を保ちながら、そこで投げ出さないで、頑張るかという点です。そして、次に自分の研究を良いものに仕上げて、先生方に持っていってということを何回も何回も繰り返して、ようやく先生方にOKと言わせ、そして学位を頂いたというのが、皆さんのこれまでの経験ではないかなと思っています。それはとても重要なことで、それを社会の中で経験している方は多くないと思います。ある特定の問題について、長い期間にわたって辛抱強く相手を説得して、それは単に説得ということよりも、きちんと準備をして、どうしてこれが違うのか、どうして自分が正しいのか、といったことを、相手に対して説得していく、それを粘り強く行い、しかもその中で相手との関係は壊さない、仲違いしたりとか、喧嘩をしたりするのではなくて、建設的な関係を築きながら、最終的に相手からOKを引き出す、ということが、皆さんにとって学位を得る上で不可欠で、それをしないと学位が頂けなかったと思います。皆さんは、それを行って、最終的に先生を説得して学位を得たわけなので、皆さんは意識していないかもしれませんが、そういう意味で、ある特定の問題を解決する上で、人間関係をどうやってうまく保ちながら、相手を説得して問題を解決していくか、そういう意味で人間関係を保つという点もトレーニングをしてきたわけです。これも社会の多くの人々が実は経験しておらず、あまり身に付けていない力であると思います。

先ほど申し上げた第一点目、深くある問題に関して持続的に考えるということ、それから第二点目、その際に人間関係を壊さないで、より建設的に問題を展開して最終的に解決に至るという力、この二つが、おそらく大学院で学ぶことによって得た、皆さんの大きな糧になっていると思います。繰り返しになりますけれども、これらの力は社会の多くの人が持っているわけではなく、皆さんは、それらを貴重な財産として身に付けて、そしてここから巣立っていくということです。この点を改めて認識していただいて、どうか胸を張って、社会に出てご活躍いただければ、あるいはすでにご活躍しておられるかもしれませんけれども、自信を持って活躍していただければと思っています。本日は本当におめでとうございます。こうした席でこのようにおめでたいことをお話しするというのは大変喜ばしいことで、私も本当に嬉しい気持ちで、皆さんを送り出したいと思います。どうもありがとうございました。

  • 修了式の様子
  • 学府長挨拶
  • けやき会館

人文公共学府博士前期課程1名が、学業成績優秀者に係る学長表彰および学術研究活動等に対する学長表彰を受賞されました。
また博士後期課程1名・博士前期課程3名が、人文公共学府長賞を受賞し、表彰されました。

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