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2020年度修了式が行われました。

2020年度修了式が行われました。その様子を写真にておしらせします。全学の様子はこちらのページから見られます。
https://www.chiba-u.ac.jp/others/topics/events/entrance/2_3.html
 

  


祝辞 2021年3月25日 人文公共学府 学位記伝達式にて


人文公共学府長 水島治郎


この度は大学院人文社会科学研究科、人文公共学府の修了、誠におめでとうござ
います。本日修了する皆さんは、幸いにも桜が咲き誇る、一年で最も美しい季節
に学位記を受け取り、新しい道へと旅立つことになります。今ここにおられる皆
さんの多くは、2年前の4月に修士課程に入学された方々ですが、実はその入学式
の時も、千葉大学で皆さんを迎えたのは、まさに満開の桜でした。入学するとき
も、修了するときも、桜は皆さんの歩む道を飾ってくれたということになります。
そんな幸運に恵まれる学年は、10年に一度ぐらいでしょうか。このように運の強
い皆さんであれば、これからどの進路に進んでも、必ずや自分の道を切り開いて
いくだろうと確信しております。


 ところで、毎年、このように3月に花が咲き誇る季節が巡ってくると、私がい
つも思わず口ずさんでしまう漢詩があります。長(とこしな)えに憶う江南三月の
裏、シャコ鳴く処、百花香(かんば)し、です。3月の江南地方、鳥がさえずり、
百の花が咲き乱れ、香しいにおいを漂わせている様子を思い出すということです。
この詩は、禅宗の公案として用いられたことで、日本でもよく知られることとな
りました。この詩をめぐって禅宗では哲学的な議論があるようですが、まさに今
日のような春爛漫のただ中にあって、咲き誇る花に囲まれて、主体と客体が一体
となる境地を示すものとされているようです。そのような境地を味わううえで、
この花が咲き乱れる3月ほど、ふさわしいときはないといえましょうか。


 本来なら本日は、新型コロナウィルスの感染拡大で一変した日本、そして国際
社会のこの1年を振り返るお話をすべきなのかと思います。しかし人間の作る社
会がいかに動揺し、私たちが苦労を重ねたとしても、春が来れば、何事もなかっ
たかのように花が咲き、そして散り、季節は巡っていきます。人間の思いをよそ
に、自然はその歩みを止めることがありません。この大規模なパンデミックもま
た、いつかは過去のものとなり、その上に歴史が新たに積み重なっていくのだと
思います。


 本日修了される皆さんは、いずれも人文社会科学分野で見事な論文を完成され、
アカデミックな能力を持つ真の専門家として、この社会に旅立とうとしています。
皆さんの行く手には、さまざまな困難があると思います。しかしどんな困難も、
この巡り巡る季節のなかにあって、いつかは過ぎ去っていきます。そしてその歩
みのなかで、皆さんが咲かせる美しい花は、決して色あせることはないでしょう。


いつの日か、桜の咲き誇る日に、皆さんと再会できることを願っております。


本日はおめでとうございます。



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